旧作映画な日々(その11)

  • 2020.05.12 Tuesday
  • 11:40

 

時節柄、どうしても家に居る時間が長くなりますので、アマプラで鑑賞した映画はここ1ヶ月で20本近くに上ります。

東京都の一日の感染者数が200人を超えて不安な気持ちが強くなった頃には、ドンパチ物のアクション映画でストレス解消していましたが、やはり飽きました(^^; ここのところの志向は、本来の自分の好みに合った作品に戻りつつあります。

 

 

 屮侫トグラフ〜あなたが私を見つけた日〜」

2019年の作品。日本では未公開のようです。

田舎の村から出てきて、インド・ムンバイのインド門前で観光客の記念写真を撮ることを生業とする主人公のところへ、会計士を目指す富裕層の女学生が現れて物語が始まります。昭和40年代頃の日本の街の風景や、当時の男女のおくゆかしさに通じるものを感じて、なんだか懐かしい気分にさせてくれる映画でした。

インドはいまだ格差の大きい社会。収入差はもちろん教育面の差も大きく、被差別カーストの識字率は66%に留まっています。ちがう階層に属するふたりの偶然の出会いは、本来その先に発展していくはずのないものでした。しかしふたりは、衝動的な恋愛感情というよりも、お互いの人格に対するリスペクトから惹かれ合うようになり、ついに階層の壁を乗り越えてしまいます。

主人公も会計士を目指す娘さんも、どちらも理系脳の設定ですので感情はほとんど表情に出ません。そこをどう酌むかがこの映画のお楽しみポイントかも知れません。

本編中に何度も登場するインドの国民車、ヒンドゥスタン・アンバサダー(1958〜2014生産)のタクシーが印象的でした。

 

 

 

 

◆屮僖拭璽愁鵝

2017年日本公開のアメリカ映画。監督はジム・ジャームッシュ。ひさしぶりに彼の映画を観ました。

思えば、1986年に日本公開された「ストレンジャー・ザン・パラダイス」は私にとって衝撃的な映画でした。当時の私は、大学を出てふつうにサラリーマン生活を送っていたものの、少々退屈で夜には港区あたりのクラブに出入りしたりしていた20代半ば。時代の流行りは自分たちが作っている、なんて感覚が仲間たちの間で共有されていたあの頃。モノクロの画面にスクリーミン・ジェイ・ホーキンスのクレイジーなシャウト。 奔放すぎる登場人物たちの生き方に共鳴したわけではありませんが、人生のつまらなさ、おもしろさをクールに表現したジム・ジャームッシュの感覚には一発でやられました。この映画、当時のアンダーグラウンド好きはみんな観てると思います。その後も彼の映画は6本ほど観ましたっけ。

 

キレッキレだったジム・ジャームッシュも60才を過ぎて”丸く”なったのか、「パターソン」では伝えたいことが穏やかなかたちで表現されています。 世界の中の自分を生きつつ、自分の中に世界を持っている人たちのお話。その自分だけの世界の価値を理解し、愛してくれる人がいることがどんなに幸せであるかを表現した映画。

ニュージャージー州の小さな街、パターソンのバスの運転手である物静かな主人公(アダム・ドライバー)は詩人でもありますが、作品は妻にしか見せたことがありません。妻もアートや料理、音楽などで自分を表現する楽しさを知る人。そんな主人公夫妻の何気ない日常を描いた作品です。好い映画でした。

 

 

 

 

 

 

「ベロニカとの記憶」

英米合作。2018年日本公開の作品。

この作品を観るちょっと前に、シャーロット・ランプリングが主演してアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた「さざなみ」を観たばかりでした。45年連れ添い、おだやかな日々を送る老夫婦。しかし、ある出来事をきっかけに妻の心にさざなみが立ちます。こちらもなかなか味わい深い映画でした。

 

今回の「ベロニカとの記憶」ではシャーロット・ランプリングは脇役です。しかし、ほかの映画と同じで彼女の存在感は圧倒的でした。

ロンドンで小さなカメラ店を営む60代半ばの主人公のもとに、彼が学生時代に交際していた相手(S・ランプリング)の母親が亡くなり、彼宛の遺品がある、との手紙が届きます。しかし、その交際相手とも学生時代に別れたっきり。なぜ彼女の母親から私に?遺品は何?というところからお話が始まります。静かにストーリーが展開していくドラマなのですが、主人公はいわゆるビミョーに空気が読めない人で、知らず人を傷つけてしまいます。若い頃は高い自意識によってその罪を意識しないまま生きて来ましたが、年齢とともに少しづつ周囲からの疎外感を受け容れざるを得なくなりました。

相手に悟ってもらえないほどの程度の軽い形質はほんとうに罪なもので、”ちょっとおもしろい人”と認識されて、友人や恋愛の対象として人間関係を持ってくれる人は多いものの、「あれ?」っと気づかれた瞬間から、あっという間に距離を取られるようになります。主人公の空気の読めなさの加減が、まさに自分に近い気がして、見ていて「アイタタタ!」という感じでした。

映画としては、とてもよく出来た作品でした。おすすめです。

 

 

 

テレビでの映画鑑賞、クセになると止まりませんよね。とは言え、早く映画なんか観てるヒマがない日常に帰りたいなー(^^;

 

 

 

 

 

 

コメント
冒頭に紹介されたボンベイ(印度)を舞台とする映画について、院長どのが「昭和40年代頃の日本の街の風景や、当時の男女の奥床しさに通じるものを感じて・・」と記述しておられますので、一寸振り返って見ました。昭和48年のオイルショックに向けて、何処のご家庭でもカラーテレビに買い替え、競って固定電話を取り付け、1200ccクラスの新車を買おうとしていた時代です。中学〜高校時代の子供二人の養育に忙しかった我が家の場合は、高度成長の波を遅れ馳せに暮らす日々でした。私も家内も人目に付くような「奥床しさ」など皆無だった筈です。ただこの時代のリーダー達は、殆ど明治大正生まれの方でしたので、院長どののご回想がピッタリのシーンも存在していたかな?と想われます。では。
  • 山野隆康
  • 2020/05/12 3:34 PM
山野さま
たしかに「おくゆかしい」は、通常女性に対してのみ使われる表現なのですが、ここでは慎みが感じられる男女の交際のあり方という意味で使わせていただきました。 私が中学高校時代を過ごした昭和40年代の郡部においては、今の子たちは想像もできないようなおくゆかしさでしたヨ(^_-)

カラーテレビや車が我が家に届いたときの興奮は懐かしく思いだされます!
  • 松本
  • 2020/05/12 5:19 PM
東北のど田舎で育った私ですが、物心ついた時には、もう農作業用の軽トラックとカラーテレビはありました。
私は、山野さんや松本先生の世代に育ててもらった世代、となるんですかね。
  • 青トゥーラン
  • 2020/05/19 10:25 AM
青トゥーランさま
便利なものがある生活はすぐあたり前になってしまって、いろいろ工夫して暮らしていたときのことはすぐ忘れてしまいますよね。アナログな時代の記憶はほんとうに愛おしいです。
  • 松本
  • 2020/05/19 11:06 AM
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