旧作映画な日々旧作(その10)

  • 2020.02.19 Wednesday
  • 17:14

 

年齢による男性ホルモンの分泌低下でしょうか、若い頃は見る気にならなかったテレビドラマを楽しみに観るようになりました。

しかし、年明けから始まった新しいドラマには食指をそそられるものがなく、仕方なしにアマプラ方面へ。

気づけばここのところ映画ネタが続いています。齢とともに冬は籠りがちになるのでそこはお許しください(^^;

 

いつもは硬軟織り交ぜるのですが、今回はちょっと真面目風味のが多めです。

 

 屮マールの壁」(2016年日本公開)★★★☆☆

パレスチナの自治区に住む固い友情で結ばれた3人の青年が、イスラエル当局の捜査官に利用されて葛藤し、お互い疑心暗鬼になりながら命をかけたギリギリの日々を生きるお話。

パレスチナで制作された映画ですが、ただパレスチナ人の苦しみの描写やイスラエルへの批判だけで終わらず、パレスチナの現在の状況を客観的な視点で捉えた作品です。 映画としても完成度も高さもさることながら、自分としては、ニュースでは見えてこないそこに生きる若者たちの日常を垣間見れたことに大きな意味がありました。

 

 

 

 

 

◆屮機璽澆侶譟廖2017年日本公開)★★★★☆

サーミ人とは、ラップランド地方、すなわちスカンジナビア半島の北部、およびロシアのコラ半島でトナカイを飼って暮らし、独自の言語を持つ先住民族です。1930年代にはまだ、スウェーデンにおいてサーミ人は劣等な民族として差別されていました。そこに生まれながら自らの運命を受け容れられず、故郷を捨てて父の形見の銀のベルトを売ったお金でスウェーデンの高校へ入学。差別を受けながらもたくましく生きて行く少女の物語。

監督のアマンダ・シェーネルはサーミ人の血を引いているとのこと。彼女の一族の中にも実際に民族としてのアイデンティティを変えた者と留まった者があり、両者は互いに話もしないのだとか。 多くの国に存在する少数民族存続にまつわる問題、そして主人公は思春期の少女。そのどちらかひとつでもデリケートな題材ですので、心して観始めました。

 

主人公の少女を演じたレーネ・セシリア・スパルクと妹のミーア・エリカ・スパルクは、実際にトナカイの放牧をして暮らすサーミ人です。ふたりは、そこに立つだけですでにラップランドの雄大な自然の一部のように感じられますし、もちろんトナカイの扱いも慣れたもの。そしてその地で思春期を迎えた主人公の少女の繊細な心の変化も彼女たち自身が経験済みでしょう。差別やコンプレックスと闘う少女の葛藤を描くのもこれまた女性の監督ですから、その心理描写は男の私などには思いもよらないもの。つい胸が苦しくなってしまって、途中で何度も休憩してやっと見終えました。女性は共感するところが多い映画だと思います。

 

 

 

 

 

「魔女と呼ばれた少女」(2013年日本公開)★★★★☆

今なお続く、コンゴ民主共和国の政情不安(ほぼ内戦状態)の犠牲になっている子供たちの姿を描いた作品です。

コンゴはアフリカの国々の御多分にもれず、豊富な資源の利権獲得を目論む先進国の干渉がきっかけとなって何度も内戦が起こり、なかでも1998年から2009年までの紛争による犠牲者は540万人に上り、40万人以上の女性がレイプされたとのこと。

対立する部族の集落を襲い、大人を皆殺しにして子供たちを連れ去るのですが、その際には子供に自分の親を殺させるのが常套手段。 以前レビューした南スーダンでの実話を映画化した「マシンガン・プリーチャー」でも同じようなシーンがありましたっけ。

この映画でも主人公の少女が両親を自分の手で殺すことを強要されるところから始まります。

 

主人公を演じるラシェル・ムワンザは、偽預言者に「この娘は魔女だ」とそそのかされた母親によって捨てられ、首都キンシャサのストリート・チルドレンとして生きていたところを拾われてこの映画の主役に抜擢されたのだとか。ほとんど表情を見せない彼女の仮面の下に隠された哀しみを感じるためだけでも、この映画を観る価値があると思います。

 

 

 

 

 

 

ぁ屮茵璽茵次Ε泙販垢垢襯轡襯ロード」(2017年日本公開)★★★★☆

チェロ奏者のヨーヨー・マが、1998年に立ち上げた「シルクロード・プロジェクト」のドキュメンタリー映画。

幼い頃から”天才”ともてはやされたヨーヨーですが、あるとき「君の音楽には声がない」と言われたことでアイデンティティが揺らぎ、自分自身の音楽のルーツを探るうちに、ある着想を得て始めたのがこのプロジェクトです。

 

スペイン・ガリシア地方からシリア、イラン、中国、日本など、シルクロードでつながる西洋・中東・東洋のさまざまな国の伝統音楽の奏者を集めて立ち上げたプロジェクトなのですが、音楽家たちの出身国はそれぞれ政治的にいわくつきの国が多く、それでも表現者としての使命感で困難を克服していった彼らのプロフィールを紹介する映像には心打たれました。中でもイランの伝統楽器ケマンチェの奏者ケイハン・カルホールと、中国の琵琶(ピパ)奏者ウー・マンの回想映像は特に印象的でした。また、ケマンチェと琵琶はどちらも振幅の大きな弦楽器。その大きな揺らぎが時空をたわませて独特な世界へいざなってくれるようで、不思議な魅力を感じました。

 

 

 

 

 

 

ァ屮汽ロモンテの丘 ーロマの洞窟フラメンコー」(2017年日本公開)★★★★★

以前使われていた”ジプシー”という言葉は、もともと国を持たずに移動型の生活をする人々を差して使われた蔑称で、そのほとんどはロマ人(北インド→ペルシャ→ヨーロッパへ広まった)。今では以前ジプシーと呼ばれた人をきちんと”ロマ”と表現するのが一般的です。

スペイン・アンダルシア地方・グラナダ県サクロモンテ地区。かつて政治的・宗教的迫害を受けていたロマの人々は、この地の石灰岩の岩肌に洞窟を掘って貧しく暮らしていました。そこで生まれたのが洞窟フラメンコです。その情熱的なフラメンコの歌や踊りは20世紀半ばに世界的な注目を集めるようになりました。作曲家のドビュッシーやマヌエル・デ・ファリャなどもフラメンコに魅了された人たちです。

サクロモンテの丘がフラメンコの聖地になっていった歴史を、そこに身を置いていた老シンガーやダンサーたちが語り、また実際に歌い、演じています。ヒリヒリと素肌に伝わってくる野性的な熱情。 劇場や都市のタブラオで見るきらびやかな衣装のフラメンコも素晴らしいのですが、客に見せるのではない日常生活の中にある普段着のフラメンコに、かえって凄みを感じて鳥肌が立ちました。

 

ほかにも何本も観たのですが、紹介しきれませんので今日はこのへんで(^_-)

 

 

 

 

 

 

 

コメント
5本の映画が紹介されていますが、私は4番目の映画に出てくるチェリスト ヨーヨー・マ氏の演奏に以前から心酔しておりました。オーケストラの指揮者である父と、声楽家である母との間に生まれた(生誕地はパリ)彼は、幼少期からヴァイオリンとヴィオラに触れ、4歳でチェロを始めたと書かれています。弓で弦を擦る楽器は、只一個の音でもスタートからゴールに至る迄に、弓圧や弓速を変化させたり、弦を押さえる指の重心位置に揺らぎを与えたりして、微妙に聴く人の心に迫る表現が出来ます。ヨーヨー・マ氏は若くしてその世界に不動の地位を築いた方でした。その彼が「君の音楽には声がない」と言われて一念発起、シルクロードの旅に出たことを、私は知りませんでした。彼は中国系アメリカ人で、1976年にハーバード大学を卒業、人類学の学位を得ています。弦楽器奏者として只々一筋に弾いているだけでは無い、人間としての幅の広さを身に付けたアーチストならではの業績を結実させた映画なのでしょうね。
  • 山野隆康
  • 2020/02/20 9:39 AM
山野さま
ヨーヨーが自分の音楽を求めて最初に向かったのはアフリカ・ピグミー族の呪術的な集いでした。彼が人類学を修めたとうかがってそれも納得です。
当院でもときどきヨーヨーの無伴奏チェロ組曲をBGMに使っていますので、山野さんのおっしゃることが少しは理解できる気がします(^^;



  • 松本
  • 2020/02/20 3:57 PM
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