映画「アヤクーチョの唄と秩父の山」を観て来ました。

  • 2019.07.30 Tuesday
  • 17:36

 

土曜の夜には台風が接近する予報でしたが、とても楽しみにしていた映画はその週末の2日間しか上映されないと聞いていましたので、半ドン仕事を終えてアップリンク吉祥寺へ向かいました。

 

映画は「アヤクーチョの唄と秩父の山」。監督は写真家のホンマタカシ。 彼がギターを習うためにギタリストの笹久保伸の元を訪れた際に、笹久保の妻イルマ・オスノと出会い、彼女の半生を映画化する決心をしたのだそうです。 劇場は2日間とも予約の段階で満席でした。

 

'74年にイルマが生まれ育ったのは、ペルー南部の標高2,731mの街アヤクーチョから、さらに車で数時間上ったところにある人口100人足らずの小さな村。 アヤクーチョは毛沢東主義の急進派アビマエル・グスマンが率いた極左武装組織「センデロ・ルミノソ」の拠点となった街です。 とくに周辺の山岳農村部では政府軍とゲリラの激しい戦闘が繰り返され、毎夜どちらかの兵士が現れては村人を拘束して行き、拘束された村人は拷問を受けて二度と帰って来ることはなかったそうです。 そんな心休まらない状況の中、家畜の世話をしながら歌を歌って育った彼女は、12才になると故郷の村を離れて首都リマに移り、教員をしながらアヤクーチョ民族舞踊団の一員として活動をしていました。 そこでペルーの伝承音楽を研究しに現地を訪れていたギタリストの笹久保伸と出会い結婚。秩父へ移住することになったとのこと。

 

映画は、そんなイルマの現在の日常と、娘を連れて7年ぶりに訪れた故郷の村の様子を通じて、彼女の音楽的なルーツ、また人生そのもののルーツを辿ります。 母親や親戚の人たちに迎えられ、アルパ(アヤクーチョ・ハープ)やヴァイオリンに合わせて歌い、踊りながら再会を喜び合うのですが、母親は終始遠巻きにイルマのことを見つめながら涙を流し続けます。 幼かったイルマを暴力から守るために必死だった頃のことを思い出したり、せっかく再会出来てもまた遠い国へ戻ってしまう寂しさがこみあげてしまうらしいのです。 何より子供の幸せを祈りながらも、年老いて行く心細さからつい泣けてしまうのでしょうね。

どこに住んでいても、歌って踊ることは生きることと同じというイルマ。そんな生き方は娘のクシちゃんにも受け継がれていくことでしょう。

 

イルマの歌は、インカ帝国の公用語であったケチュア語で歌われる高いトーン。小魚のターンのようにクルクルこぶしが返る独特の歌唱法です。ただただヒステリックなだけのハイトーンだと、耳から入ってきても自動的に脳のシャッターが下りてしまうのですが、彼女の声や歌には彼女自身の人格と伝承されるスピリチュアルな要素が反映していて、なにか神秘的な気持ちにさせられます。

 

映画が終わったあと、ご主人の笹久保伸さんがステージで静かにギターを弾き始めたかと思ったら、劇場の客席からイルマが現れて1曲歌ってくれました。ギターも歌も鳥肌が立つほどすばらしかったです。

 

私はアフリカにルーツを持つ黒人の音楽が大好きなのですが、人類が誕生したアフリカと、彼らが太古の昔に自分の足でたどり着いたもっとも遠い場所である南米大陸。それぞれの地域でそれぞれに育まれた音楽にものすごく魂を揺さぶられることが、なんとなく興味深く、そしてまたうれしくもあるなあ、と感じた夜でした。

 

2019.7.27ブログ.jpg

 

 

 

 

イルマのアルバムの版動画。TAKIとはケチュア語で「歌」という意味だそうです。

 

 

 

笹久保伸のギター。

 

 

 

 

 

 

コメント
私がフォルクローレ(南米の民俗音楽)の生演奏に触れたのは還暦過ぎのことでした。男女学生5〜6名の同好会メンバーで、僅かな装身具を学生服の上に重ね、身振りも微かに、吹奏楽器主体の素朴なメロディーが、繰り返し続けられておりました。上達した頃には卒業してしまうので、技術水準は決して高くありませんが、直向きに歌い、揃って没頭してゆく雰囲気をいつも私は気持ちよく眺めておりました。笹久保・イルマご夫妻のお話感慨深く拝読しました。有り難う御座いました。
  • 山野隆康
  • 2019/07/31 5:20 AM
山野さま
北米やヨーロッパには興味が湧きませんが、アフリカや南米(とくにアンデス地方やアマゾン、あパタゴニアも!)はいつか行ってみたい場所です。
吹奏楽器はサンポーニャでしょうか。患者さまがお土産でもらったらしく、こんど院にお持ちいただけるとのこと。はやく吹いてみたいです♡
  • 松本
  • 2019/07/31 9:13 AM
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