「ビル・エバンス タイム・リメンバード」を観て来ました

  • 2019.07.03 Wednesday
  • 17:35

 

私と同世代のプロピアニストの患者さまから、「とても印象的な映画だったので観たほうがいいよ」と聞いたのは1ヶ月以上前のこと。自転車に乗れない雨の日曜日があったら観に行こうと思っていましたが、この日曜日、上映終了の週になってやっとチャンスが訪れました。

この映画、アップリンク吉祥寺でこの映画が封切られたのが4月27日なので、もう2ヶ月以上の長期にわたって上映され続け、この日も満席でした。

 

ジャズという音楽の進化に大きな功績を残したビル・エバンスですが、じつは私は彼の演奏は好きでも嫌いでもありません。 耳に心地よく知的(モードなんちゃら)でクール。 ジャズ初心者が受ける印象は美しく抒情的。超高度な音楽的感受性が備わった人は、その奥に秘められた狂気を感じるらしいです。 そのどちらでもない私には、何かすべてが整いすぎた彼のピアノはまったく響いて来ないのです。 世界中のジャズファンにこれだけ愛されたピアニストですから、彼が音に込めたものを感じ取れないのは、私の感性の問題なのはまちがいありませんが(>_<) 

 

以前にも書いたように、私が音楽や文学・アートに求めるものは、遺伝子のひだの裏の裏あたりにある、人類の祖先から刻まれた記憶を呼び覚ますスイッチとしての役割です。そう、もっとエモーショナルな激しさであり、美しさなのです。構築された”美しさ”は私が求めるものではありません。

 

映画は評判通りすばらしい作品でした。 才能が突出している分、何かが欠落した人の物語。同じく破滅的な人生を送ったジャズ・トランペッター、チェット・ベイカーの映画「Lets Get Lost」「ブルーに生まれついて」にも通づる切なさでした。

ビル・エバンス史上、最高の録音と言われた1961年のヴィレッジ・ヴァンガードの夜の直後に、盟友のベーシスト、スコット・ラファロが事故死。 仲の良かった兄は病気を苦に自殺。 恋人を苦しめて自殺に追い込み、自身はヘロイン中毒で45分に1回注射。 心身ともにズタボロな状態だった彼。 仲の良かった友人によると「彼の死は、時間をかけた自殺というべきものだった」とも。 CDから聴こえてくる、美しく繊細なタッチのピアノとの対比がますます皮肉です。

 

ビル・エバンスのピアノを聴きに行ったのではなく、ジャズの歴史の勉強のつもりで観に行ったこの映画。 結果、彼の音楽からは感じられないブルースを、彼の人生から感じることになりました。

 

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コメント
若い時から歌曲や器楽の音に囲まれ、育まれた才能によって自ら新たな楽曲を、あわよくば未開の楽曲形式を創造せんとする、新進作曲家によってクラシック音楽は発展してきました。ですから演奏会で奏でられる音は、公表されている楽譜や作曲者の指示メモに、相当程度の忠実さを失うことは許されません。これに対しアドリブを基本とするジャズには、演奏者のその時その場で沸き起こる閃きが聴衆を衝き動かし、時として狂気を催おさせる結果を生むのでしょう(但し私には未経験の分野です)。院長どののご述懐を、忖度しつつ頑張って書いてみました。
  • 山野隆康
  • 2019/07/04 5:45 AM
山野さま

まさしくクラシックとジャズの違いは、まさにおっしゃる通りだと思います。

ハナシのレベルは下がりますが、勉強嫌いの私などは音楽を記号に変えて再現することに抵抗があります。真面目に取り組めば、たぶん少しは譜面も読めるようになるとは思いますが、あえて音楽は「勉強」したくないのです。
なので私の音楽の理解度も原始人的。これからも原始人で行きたいと思います!
  • 松本
  • 2019/07/04 10:49 AM
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