フアン・ルルフォ「燃える平原」

  • 2019.04.26 Friday
  • 11:46

 

少し前の更新では、同じフアン・ルルフォの「ペドロ・パラモ」について書きました。これは読み進むのに苦労した本でした。

読み終えたあと、日頃から仲良くしている音大生のウッシーが治療で来院した際、ちょっとしたいたずら心で「読んでみ」と手渡したところ、なんとどハマりしたとのこと。 それ以来彼も南米マジックリアリズム遍歴を続けているようです。 本場の音を求めてブラジルまで行っちゃうパーカッショニストのウッシーですから、何か血が呼ぶんでしょうかねえ。

 

さて、そのウッシーがルルフォの「燃える平原」を貸してくれて、昨日読了しました。 ラテンアメリカの作家の中でも重要な存在であるルルフォ。 ただ彼が小説として残した作品はたった2作品だけ。それが1953年出版の短編集「燃える平原」と1955年に出版された上記の「ペドロ・パラモ」です。


「ペドロ・パラモ」は、架空のゴーストタウンで、生物と死者のさかい目が取り払われた不思議な世界を浮遊するマジックリアリズムの作品でした。 一方「燃える平原」は、ゆがんだ時空の世界の話ではなく、地に足の着いたナマの世界の話です。 メキシコの乾いてひび割れた大地で絶望的な貧困の中、いつも死を身近に感じながらその日その日を懸命に生きる人間の、救いのないエピソードを綴った短編集。 ”マジック=魔術”の要素が含まれない分、絶望や死がよりリアルに描かれています。 どれもこれもがしんどい話なのに、途中で投げ出そうという気にならないのは、メキシコの大地同様、乾ききったルルフォの文体のおかげだと思われます。

 

とても創作によるものとは思えないストーリーは、暴力や死が日常に存在したメキシコ革命の真っ最中に少年時代を過ごし、自身も父や叔父を殺されたルルフォが実際に見聞きした話を元にしているような気がします。

傑作と評される2作品を出版したあと、新たな作品を発表することのなかったルルフォ。 勝手な想像ですが、少年時代に見聞きした悲惨な出来事を作品のかたちで言語化することがPTSDの治療のような効果を生み、心的外傷が癒えたあとは創作の源泉を失ってしまったのではないかと。

 

書いているうちに、こんな辛気臭いレビューだと、みなさんが読んでみようという気にならないのではないかと心配になって来ました(^^; まぁヒリヒリなストーリーは置いといて、素朴な登場人物たちの心理、色や匂いや風など牧歌的な情景の描写もすばらしく、名作の評価もうなづける読み応えのある作品でした。おすすめです!

 

2019.4.25ブログ.jpg

 

 

 

 

 

コメント
「ペドロ パラモ」は、架空のゴーストタウンで、生物と死者の境目が無い不思議な世界!と書かれると、私にはとても付いて行けない領域なんですが、中米〜南米の音楽に陶酔するパーカニッショ二スト氏のご推薦による書と言われれば、嘗てブラジルに旅した事のある者として、仄かながらも関心を掻き立てられました。明日からは10連休、皆様のご健勝を念じ上げます。
  • 山野隆康
  • 2019/04/26 5:18 PM
山野さま
中南米はいつか行ってみたいと憧れ続けています。
地理的にも地球の裏側ですが、ときどき衝動が理性に勝ってしまう気質も、われわれ日本人とは対極にある印象。怖いもの見たさでそんな中南米の雑踏に身を置いてみたいんです。

2週続けて日・月の連休を頂いてしまいますが、ご都合よろしい日にぜひまたお越しくださいませ(^^)
  • 松本
  • 2019/04/26 7:22 PM
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