旧作映画な日々(その9)

  • 2019.03.26 Tuesday
  • 17:03

 

ひさしぶりに自宅で何本か映画を観ました。

と言うのも、CDラックから取り出して久しぶりに聴いたカエターノ・ヴェローゾがきっかけで、彼のライブのシーンが挿入された映画「トーク・トゥ・ハー」を思い出し、その映画の冒頭でダンスシーンが取り上げられた振付家・舞踊家ピナ・バウシュを追ったドキュメンタリー映画「PINA」を見逃していたことを思い出したからです。

 

「PINA/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」の監督はヴィム・ヴェンダース。「パリ・テキサス」以来、彼の作品は何本も観ていますが、当時「PINA」の公開をまったく知らなくて見逃してしまい、おおいに後悔しました。

今回、オンラインで「PINA」をレンタルするにあたり、ついでに3本ばかり見つくろってみたのが、ぜんぶ「トーク・トゥ・ハー」のペドロ・アルモドバル監督の関わった作品ばかり。 内容は「オール・アバウト・マイ・マザー」「私の秘密の花」「人生スイッチ」。 3本とも「トーク・トゥ・ハー」同様、既存の価値観への挑戦状のような作品で、かなり見応えがありました。

ただやはり「PINA」のインパクトがあまりに大きかったので、今回は「PINA」について書かせていただきます。

 

今は亡きピナ・バウシュは、ドイツ・ヴッパタール舞踊団の芸術監督でした。 この映画は彼女と親交のあったヴィム・ヴェンダース監督が彼女とヴッパタール舞踊団を追ったドキュメント。 映画のほとんどはダンスシーンと団員へのインタビューで構成されています。

 

ヴッパタール舞踊団の各メンバーはいろいろな人種・民族で構成されています。 中には韓国や日本人のメンバーも。 それが人種や性別や価値観のちがいによって生じるもどかしさや悲しみを表現するときに、大きな説得力を生んでいます。 それぞれのダンサーがソロを取ると、その踊りには彼らの出自たる民族の個性が反映されているのも興味深いところです。 スラヴ人は力強く、ラテン系は情熱的に、アジア人は繊細ではにかみがちに。 民族性という意味では、人間の本性を暴き出すために特化した無駄のない演出にはピナの生真面目なドイツ人気質が反映されているのかも知れません。

 

団員の”身体言語”を目的にして進化した身体の美しさは、他人と競い合うために特定のスポーツで鍛え上げられた身体とは異質のもので、例えるなら刀剣のよう。静謐な佇まいの中に恐ろしいほどの力が秘められていることが感じられます。 いったん力が放たれると、その力は身体の動きだけでなく、空気を切り裂いたり優しくなでたりする残像にまで及んでいくようです。

 

私はもともと舞踊や舞踏というものにあまり関心がありませんでした。 しかし10年ほど前のこと、俳優として魅力を感じていた舞踊家・田中泯のルーツを知りたくなり、彼の独演舞踊ライブを観に行って衝撃を受けました。 彼が伝えたいものが何なのかはよく理解できませんでしたが、何かが取り憑いて狂気に支配された彼の踊りを見ていると、こちらの毛穴も全開になる感じでした。 ただ、その理解できなかったものが何なのか、自分の感受性の限界をもどかしく感じながら帰路についたことを覚えています。

 

ピナの手法は”タンツテアター(ダンスシアター)”と呼ばれるダンスに演劇的要素を取り入れたもの。 このスタイルだと彼女がテーマとする「愛と痛み」「美」「悲しみ」「孤独」などが、しっかりと伝わって来ました。

 

何度も観たい映画でしたので、結局DVDを買ってしまいました(^^;

 

2019.3.19ブログ.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
稀代の舞踊家ピナ・バウシュを追ったドキュメンタリー映画のお話に始まり、日本人舞踊家田中泯氏の、実演から受けた衝撃の吐露にいたる、院長どの独自の(素朴な)体験記、興味深く拝読しました。敗戦の翌年未成年だった私は、北関東の某高女屋内運動場で行われた「石井漠舞踊団」の公演を、誘われて観に行きました。当時漠氏は六十歳ぐらい、同行する踊り子は5〜6名でトゥシューズを履いている娘は一人っきり(物資不足のため)。幕など無く、一曲踊ると皆さん揃って舞台脇の衝立の陰にもどります。そこで漠氏は色々解説してくれました。「私が剽軽な面持ちになったら、構わず笑ってくださいね!でないと調子がでないんです」。戦争の惨禍から未だ立ち直れず、運良く焼け残っていた屋内運動場で、芸術らしきものへの開眼に連なって行く私でした。
  • 山野隆康
  • 2019/03/27 2:18 PM
山野さま
石井漠という舞踊家を知らなかったのですが、ピナと共演したこともある世界的な舞踊家大野一雄の師匠のようです。
多感な頃にそんなすごいものを見られたとのこと。それこそ衝撃的だったのではないでしょうか。
芸術にはいろいろな表現方法がありますが、これからも好奇心を失わないで、何でもかじっていこうと思います。
  • 松本
  • 2019/03/27 5:48 PM
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