イニャリトゥ作品、全制覇したけどさぁ、、

  • 2017.06.21 Wednesday
  • 21:44

 

アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督。 発音しにくいラストネームなので名前を覚えるのをあきらめちゃった人も居るかも知れませんが、一昨年に「バードマン」でアカデミー賞作品賞を受賞し、昨年も「レヴェナント:蘇りし者」で監督賞を受賞。 菊地凛子が助演女優賞にノミネートされた「バベル」でもメガホンを執った監督といえば、映画好きの方でなくても「あぁ、あの監督ね」となるのではないでしょうか。

 

「アモーレス・ペロス」(2000年公開)イニャリトゥのデビュー作です。 1件の交通事故で交わる3つのエピソードを、それぞれの人生で色付けしていく三幕構成。  短絡的な暴力が身近にある貧困層の生活の描写はリアリティありすぎでした。 それも納得、脚本のギジェルモ・アリアガはメキシコシティでもっとも治安の悪い地区で育ったらしく、ケンカでのケガが元で嗅覚を失ったのだとか。そういう生い立ちをもつ人でないと書けない脚本だと思います。 粗削りでも表現に対するものすごい”熱”が感じられる映画でした。

 

「21グラム」(2003年公開)「アモーレス・・・」をより文学的にしたような作品でこれもなかなかしんどい内容でした。 受け容れがたい出来事が生じたとき人はどう向き合うのか、、 ショーン・ペンやナオミ・ワッツ、ベニチオ・デル・トロの演技も素晴らしかったのですが、この映画でも何しろギジェルモ・アリアガの脚本の力が凄くてぐいぐい引き込まれました。 ひとつの出来事が出会うはずのなかった登場人物たちの間に複雑な関係を作り、それぞれの心理がそこに絡みついてなおさらコトを複雑にしていく、まるで重いブルーズを聴くような映画でした。 

 

「バベル」(2006年公開)話題になっていたので観てみました。 借りて来たDVDを疲れて半眠むのコンディションで観たのがいけなかったのか、まったく印象がありません、、(^^;

 

「ビューティフル」(2010年公開) イニャリトゥ作品の中でいちばん好きです。 舞台はスペイン。主人公の父はフランコ独裁政権の弾圧を受けメキシコに逃亡するもそこで死亡。 彼は父の顔も見ぬまま貧しい環境で育ち、中国人やセネガル人の不法就労者の手配師をして生計を立てています。子どもは二人いますが、妻は双極性障害で子育てをすることが難しく別居中。そんな彼がガンで余命2ヶ月と宣告されます。 残された時間を、妻・子どもたち・中国人・セネガル人、それぞれの背負った荷を少しでも軽くするために使う彼。 胸が苦しくなりますが、最後には小さな救いが。

 

「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年公開) ご存知アカデミー賞作品賞に輝いた1本。 緊張感を途切れさせない、ワンカットでの撮影法が話題になりましたね。 主人公はやはり現実を受け容れられず適応することに苦しむ人。 この作品では社会的な問題を取り上げず、テーマを主人公の内面に絞り込んだ分、イニャリトゥ作品の中ではもっとも文学臭が強かったように思います。なので当然アカデミー賞受賞作としては興行成績はぱっとしませんでした(>_<)

 

 

「レヴェナント 蘇りし者」(2016年公開) ほかの作品はDVD発売直後に観ていたのですが、”復讐”とか”リベンジ”とかが大きらいな私は、この作品を観るのを敬遠していました。しかし観たい映画が弾切れしてしまったので、ついamazonプライムビデオでポチってしまいました。

 

開拓時代のアメリカで毛皮猟師の一団の案内人だった主人公が、熊に襲われて瀕死の重傷を負いますが仲間に置き去りにされ、復讐のために生き延びて思いを遂げるというハナシ。 私としてはやっぱり「イニャリトゥどうしちゃったの?」という内容の映画でした。

というのも、イニャリトゥはデビュー作「アモーレス・ペロス」を撮るとき、亡くなった息子さんに捧げる気持ちで臨んだそうです。そのとき「人格は、失うことで形成される。人生は失うことの連続だ。失うことで、なりたかった自分ではなく本当の自分になれる。」と話していたとのこと。 確かに自分の手の中にあったもの・あると信じていただけのもの。死に物狂いで手に入れたもの・あるのがあたりまえだったもの。 家族や自らのアイデンティティなど、有形・無形の大切なものを失ったときの受け容れの苦しさを表現するのがイニャリトゥ作品に通底するテーマだったはずなのに、レヴェナントってば、、(>_<)  やはり製作費が1億3500万ドルのハリウッド映画となれば失敗は許されないので、わかりやすいストーリーとお約束のカタルシスで数字を取りに走ったのか、、 いや、彼に限ってそんなベタな動機でこの映画を作ったとは思えないので私の理解力不足なのかもしれません。 

いずれにせよ次の作品を観ればきっとその答えが出るでしょう。 たのしみです!

 

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コメント
イニャリトゥ監督の作品を全制覇したとのこと、国産映画のみならず広く洋画などにも目を向けて、熱心に鑑賞し(単に筋を追って楽しむだけでなく)生きることへの糧として行く院長どのの態度に敬意を抱いております。今回は小生、全く未知の分野なので、何のコメントも出来ず残念です。冒頭の「アモーレス・ペロス」は、1件の交通事故を3つのエピソードにより複眼的に捉えている作品のようですが、オムニバス映画になっているのでしょうか?(ご返事はお会いした時でも結構です)。
  • 山野隆康
  • 2017/06/22 5:23 AM
山野さま
検索してみましたが、この映画の手法にいわゆる「オムニバス」の定義があてはまるのかどうかよく分かりませんでした。「グランドホテル方式」であるという人もあるようです。勉強不足ですみません(>_<)
  • 松本
  • 2017/06/22 9:12 AM
私の申し上げたかったのは、米国映画「運命の饗宴(1942)」のように、一つの燕尾服が、最初の富豪から、次々と人手に渡って行き、最後には貧乏人のもとで使われる、という筋なのですが、夫々の場所でユニークな、エピソードが描かれる、と言ったタイプのことです。オムニバス映画という言葉を初めて知ったのがこの「運命の饗宴」でした。舌足らずで失礼しました。辞書では、数編の独立した話を並べて一つの作品に構成したもの、と定義されています。
  • 山野隆康
  • 2017/06/22 1:02 PM
山野さま
「運命の饗宴」おもしろそうですね! 「アモーレス・・・」もまさしく同じようなタイプの映画だと思います。 ”オムニバス”という言葉、どうやら日本では本来の意味とはちがう独自の使われ方をしているようですね。
  • 松本
  • 2017/06/22 3:18 PM
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