旧作映画な日々(その6)

  • 2017.01.17 Tuesday
  • 17:50

 

録画しておいたテレビのお正月特番もひと通り見終わり、またまた旧作映画な日々がもどって来ましたヨ♡

 

 

「レスラー」★★★★☆

2008年公開。 当時56才のミッキー・ローク主演で、'80年代に全米のスターだった初老(中老?)の現役プロレスラーの苦闘の日々を描いた映画です。 私と同年輩の主人公を見ているとすっかり身に詰まされてしまって一度では観きれず、何回にも分けてやっと観終えました。

仕事も私生活もうまく行かず、齢を取って男性ホルモンの分泌も低下して行き、何か心細くなって今までほったらかして来た娘や心を寄せる女性にすがってみるもののうまく関係を構築できず、最後に自分を救ってくれたのは、、

プロレスラーの日常が、そこまで曝す?ってくらい赤裸々に描かれていて、プロレスファンな方はがっかりしてしまうかも知れません。

思えば、同じ’80年代に 「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」 「ナインハーフ」 でブレイクしたあと、スキャンダルや2度の離婚などもあり、すっかり影を潜めていたミッキー・ローク。 主人公のプロレスラーに自分の人生を重ねたのではないでしょうか。

 

 

「マシンガン・プリーチャー」★★☆☆☆

2011年公開。 実話です。 麻薬密売人のサム・チルダース(実名)が、ある事件をきっかけに更生し、現在も内戦状態が続いている南スーダンに孤児院を建てるまでを描いた作品。 

ウガンダ北部と南スーダン南部で活動する反政府組織LRAのリーダー、ジョゼフ・コニーは集落を襲っては子ども達を誘拐し、強制的に戦闘員や性的奴隷にしており、その数は2万人以上に上るとのこと。 本来被害者であるはずの子ども達が殺戮を繰り返すことが問題をより複雑にしているようです。 日本の自衛隊が派遣されている国がどのような状況なのかを知りたくて見てみました。

 

先進国の人々に現地の状況を知らしめるためには意味のある映画だとは思いますが、マシンガン・プリーチャー(牧師)と呼ばれる主人公チルダースにすっかり感情移入してしまうと、観る人によっては、ものすごく複雑な経緯で生まれた状況を正義と悪の二元論的な思考で認識してしまう怖れがある気がします。 その感覚こそが今の世界の状況を難しいものにしている根源。 いかにもアメリカの映画だなあ、というのが率直な感想です。

 

 

「トト・ザ・ヒーロー」★★★★★

1991年公開。 ベルギー・フランス・ドイツ合作。 子どもの頃から妄想癖のある主人公にはある種の ”形質” が感じられます。

その彼が老人になり、自らの人生を振り返るのですが、回想された事実も混乱を極めたものになります。ただ彼の中でひとつだけゆるがないのは、向かいの家に住む幼馴染みへの嫉妬心。 

この映画の主人公にははっきり ”形質” が見てとれますが、世の中の「自分はまともだ」と思い込んでる人にも程度は違えど必ずなんらかの形質は潜んでいるものです。 社会に適応しにくい主人公を病的な形質と突き放して見るか、彼に自分を重ねて見るかで受けとめ方が変わる映画だと思います。

ラストシーンで主人公は火葬されてしまうのですが、遺言なのでしょう、遺灰は飛行機から撒かれます。 このとき初めて彼の魂は解放され、ほんとうの幸せを感じるのです。

監督の、ポジティブな意味での死に対するあこがれが色濃く反映した映画です。 ものすごく共感しました。

 

 

「ミッドナイト・イン・パリ」★★★☆☆

2011年公開。 脚本・監督ともにウディ・アレン。 婚約者とパリを訪れた小説家が、ある夜単独行動することになり、道に迷ってひと息ついた路地に横づけされたのは1920年代製のプジョー。 車内でどんちゃん騒ぎする男女に誘われるまま車に乗り込み、着いたクラブでは、本物のコール・ポ−ターがピアノを弾いており、スコット・フィッツジェラルドやヘミングウェイが哲学的な議論を楽しんでいました。 そうです、主人公は1920年代にタイムスリップしてしまったのです。 

ほかにもゴーギャン、ドガ、ダリ、ガートルード・スタイン、T.S.エリオット、マン・レイなど、私の知っている範囲だけでもそうそうたる顔ぶれの創作家たちが登場します。

とくに心に残るものはありませんでしたが、なにしろ奇想天外な着想とよく書けている脚本のおかげで、とてもおもしろく観れました。 

 

 

「捨てがたき人々」★★★★★

2014年公開。 原作は 「銭ゲバ」「アシュラ」 などで人生のブルースを描いて、人の心の深層に哲学的な問いを投げかけ続けるジョージ秋山の漫画です。

主演は大森南朋。 「ヴァイブレータ」を観て、もうすこし彼の出演作が見てみたくなり、リストを検索してこの作品にたどり着きました。

親からの愛を充分に受けず、自己肯定感を持てないまま成長してなげやりな人生を送る主人公。 シニカルな言動の奥には心のつながりを渇望する自分が居るのですが、また裏切られることが恐くて、女性との身体の関係にしか人の温かさを見出せないで生きてきました。  あるときそんな彼が強姦同然の行為で子どもを授かりました。 さて、彼の心に何か変化が起きたのでしょうか。

それから何年か経って迎えたラストシーン。ひとり海辺を歩く彼の心が満たされたのか、あるいはより絶望が深くなってしまったのか、はっきりとした答えが示されていません。 それを観客に考えさせることが、すなわちこの映画のテーマなのかも知れません。

 

 

「ムーンライズ・キングダム」★★★★★

2012公開。 ウェス・アンダーソン監督の作品は「ダージリン急行」しか観ていませんでした。 ヒューマンコメディの 「ダージリン・・・」 は、なにしろ水平移動のカメラワークと全編を通じてのキッチュな色彩が強い印象として残っています。

この 「ムーンライズ・・・」 では、それにも増してものすごく長いレールで撮ったと思われる、まるでドールハウスを見るような水平移動による撮影法、そして’60年代という時代設定にもとづいて当時流行したシャーベット・トーンで彩られた映像は一度見たら忘れられないインパクトです。

ボーイスカウトのキャンプに参加している12才の少年は、空気が読めずまるで集団生活に適応できません。 キャンプ地近くに住む少女も同様の形質。 偶然出会ったふたりは魅かれ合い、脱走&家出による駆け落ちに踏み切ります。

私の記憶が正しければふたりとも最後まで一度も笑顔を見せることはありませんでした。 絵画など突出した才能や知能はあるものの共感能が欠落したふたり。 明らかに "ある形質" をもった彼らを最後には周囲がゆるしサポートしていくストーリーは、現実世界ではなかなか起こりにくいファンタジーです。 ただ、ほんとうにそんな心豊かな社会が実現すればいいなあ、と温かい気持ちになりました。

 

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コメント
冒頭に掲げられた[[レスラー]]、院長どののも有って、映画を観ていない私にもそれなりの共感が与えられました。私が数年まえに読んだ、元ボクサー達4人の生き様を描いたもの(題名が思い出されませんが)、日々配達時刻を待つほど熱読しておりました。私には小説の想い出しか出てきませんが、コメントに代えさせて下さい。
  • 山野隆康
  • 2017/01/18 6:21 AM
前便で院長どののに続き[[思い入れ]]が欠落していました。失礼しました。
  • 山野隆康
  • 2017/01/18 6:26 AM
山野さま
ボクサーの小説は新聞に連載されていたのでしょうか。 またお話しを聞かせてくださいね。
  • 松本
  • 2017/01/18 10:42 AM

検索で調べたとこり、沢木耕太郎作、中田春彌挿絵「春に散る」でした。チャンピオンに挑むタイプのサクセスストーリーではなく、栄冠に達せられなかった4人の元ボクサーの老後を描いたものです。それなりに生きがいを見つけて行く筋で、私にはワクワク感がいつも掻き立てられる楽しみが有りました。では。
  • 山野隆康
  • 2017/01/19 5:48 AM
山野さま
沢木耕太郎はずいぶん前に「一瞬の夏」という、やはりボクサーを題材にした小説を書いていますし、”ボクサー”という生き方に思い入れが深い人なのでしょうね。
「春に散る」もおもしろそうですねえ(^-^)
  • 松本
  • 2017/01/20 10:21 AM
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