空に向かって跳びはねてみませんか?

  • 2015.05.20 Wednesday
  • 14:05

5月4日に再放送されたNHKの 「君が僕の息子について教えてくれたこと」 を観ました。
重度の自閉症をもつ詩人で絵本作家の東田直樹さんと彼を支える人、そして彼の本に救われた人たちのお話しです。

連休明け、当院のスタッフ女史にその番組の感想を話したところ「彼の本、うちにあります」 とのこと。 すでに昨年の初回の放送を観ていた彼女は、そのあとすぐ東田さんの 「跳びはねる思考」 というエッセイ集を読んでいたのです。

成人しても自らの形質に気づかず適応に苦しみ、それを身体の症状として自覚して受診する患者さまも多いのですが、そんな彼らのことを知るために、すすんで自閉症スペクトラムについて勉強していた彼女には頭が下がりました。

さっそく私も借りて読んでみました。

ぜんぶで37のエッセイのうち、はじめの3タイトルは「僕と自閉症」「刺すような視線」「障害を抱えて生きること」 で、自閉症を生きることについて書かれていました。 これらはとても重要な内容なのですが、自閉症を紹介する本はほかにもたくさんありますので目新しくは感じませんでした。

4つめのエッセイのタイトルはとつぜん「夏が来るたび」。  ここからは彼が心を奪われるほど好きなもの、心が安らぐ時間や対象がいくつも紹介されます。 そのどれもが私の好きなものと重なるので、ついブログに上げてしまいたくなったのです。

「夏」「植物」「水」 どれも私がとくべつに思いが強いものばかりです。

「夏」 の強烈な陽射しや朝の草いきれは、故郷の室戸への郷愁を誘いますし、何より夏は、目に入るもの、耳に聴こえるもの、肌に感じるもの、そのすべてがにぎやかで、落ち着きのない自分の心を開放しても許される気がして安心できるのです。

「植物」 以前このブログにも書きましたが、もし生まれ変われるなら、湖を見下ろす斜面に立つ梢の高い針葉樹になりたいと思っています。 なぜか、と訊かれてもうまく説明できませんが、私にとって植物はとても純粋な命に思えるのです。 しずかな心で光や風や四季を感じて過ごしてみたいなあ。

「水」 これもやはり子どもの頃、川や磯や浜で海に潜ったときの身体の自由度や心の開放感は、今でも鮮烈な記憶として刻み込まれており、ふたりの息子にも水に関わりのある名前をつけたほどです。

こんな純粋で感性のゆたかな人と好きなものがいくつも共通するなんて、うれしいかぎりです。


最後に 「言葉」 というエッセイの一文を引用させていただきます。

「話ができず不便だったり、大変だったりすれば、どうしたら少しでも言葉が伝わるか、自分でも工夫し、何とかしようとするはずです。 これは、報われるためではなく、生きるための努力なのです」

一般に自閉症スペクトラムの人は、他人の心を理解するのが苦手なのですが、自らの心を記述するトレーニングをすることで、少なくとも他人に自分を理解してもらうことができるようになり、コミュニケーションの糸口がつかめる。 そんな達成感が自己肯定感につながるという意味だと思います。 共感能が心もとない私自身もまさしくそうやって対人関係を維持してきたので、彼が言わんとすることが痛いほど理解できました。

彼らと同じ 「形質」や「素因」 は、多かれ少なかれ誰にも存在するもの。 自閉症の人の心を知ることは、いわゆる 「健常者」 であるあなた自身の純粋な心を再発見することにつながるかもしれませんよ。

DSC_0156.JPG













 
コメント
自閉症や引きこもりの人達に対する院長どのの深い思いやり、拝読しました。今後は私ももっと関心をもち、テレビ番組の選択などに留意して行こうと思います。
  • 山野隆康
  • 2015/05/21 5:21 AM
山野さま
私自身も自らの形質を自覚しておりますので、思いやるというより彼らとの共通点をみつけられると安心するのです。 自分はエイリアンではなかったのだと。。
  • matsumoto
  • 2015/05/21 9:14 AM
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